世界における風土の型を三つに分けたこと

 和辻博士が、世界における風土の型を三つに分けたことは、相当ひろく知られていると思う。モンスーン、砂漠、牧場の三型である。いまは他の型は論外としよう。日本はモンスーン型にぞくする風土をもつ。いな日本に於ける人間的存在は、モンスーン的風土に於て自己了解し、間柄をもつ、と云うべきなのだろう。とに角、卒直な事実は、吾々が日本という土地に住んでおり、その土地はモンスーン地帯にぞくしているということだ。 モンスーンは季節風である。この風土的類型にぞくする日本は、さらに、突発的な季節風に見舞われるという意味に於て特に台風[#「台風」に傍点]的風土をもつ。そこで博士は云っている。「だから台風が季節的[#「季節的」に傍点]でありつつ突発的[#「突発的」に傍点]であるという二重性格は、人間の生活自身の二重性格に他ならぬ」と。台風は自然科学にぞくする気象学的研究対象であろうが、そして、それが日本人の生活に影響を与えるということは、誰知らぬ人もないが、和辻氏によると、台風が稲の花を吹くことによって人間の生活を脅かすというので、この気象学的対象は忽ち人間的構造へと昇格させられる。そこで気象学的二重性格は、すなわち日本人の人間的二重性に他ならぬ[#「他ならぬ」に傍点]ということになる。事実は単に、自然科学的な台風が吹いて、稲がやられて、農民が生産生活に心配が多いということだが、それが人間的風土論から行くと、台風という自然現象は、人間存在の構造の内で吹きまくらねばならぬこととなる。しかしそれはそれとして、ここでは次のような人間存在の構造が発見される。「豊富な湿気が人間に食物を恵むと共に同時に暴風や洪水として人間を脅かすというモンスーン的風土の、従って人間の受容的[#「受容的」に傍点]、忍従的[#「忍従的」に傍点]な存在の仕方の二重性の上にここには更に熱帯的、寒帯的、季節的、突発的という如き特殊な二重性格が加わってくるのである」と。 まず念のために注意しておくのだが、この熱帯的寒帯的とか季節的突発的とかいうのは、動植物や風のことではなくて、「人間存在の仕方」のことだということを。これによって日本の人間の存在の仕方が、つまり俗に云う日本の国民性というようなものが、解釈学的に演繹(?)されるのである。曰く「豊富に流れ出でつつ、変化において静かに持久する感情」、之が日本の人間存在の受容性の特有な内容となる。また「あきらめでありつつも反抗に於て変化を通じて気短かに辛抱する」というのが、モンスーン的忍従性の内でも、日本の人間に固有な特異性だという。でつまり「しめやかな激情、戦闘的な恬淡」が「日本の国民的性格」に他ならない。そしてこの本性は事実上、客観的に歴史を通じていろいろに表現されている。日本の人間存在に於ける男女の間、家族、家、国家、宗教、その他に一つ一つ、それと覚しく解釈できるものが見出される。等々。

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