一人の烱眼な歴史哲学者

 だがこの転向は必ずしも三木の保身上のアダプテーションの結果ばかりではない。この転向の可能性はプロ科時代の宗教論の内にすでに現われていた。それというのも彼はあくまで歴史哲学者であったので、初めからマルクス主義者などになったことはなかったのである。彼がマルクス主義=唯物史観に接近したのは単に一人の烱眼...

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三木哲学

 三木哲学はマルクス主義に哲学的基礎を与えると称して、例の基礎経験(之はディルタイから借りた言葉である)というものを回る人間学を持ち出したが、それも実は歴史哲学の一つの亜種としてであったのである。三木哲学という近代的な歴史哲学[#「歴史哲学」に傍点]が、初めからマルクス主義でなかったことは、今にして...

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学生時代から有名な秀才

 三木は学生時代から有名な秀才であった。一種の学生名士でさえあった。尤も決して律気な又は細心な勉強家ではなかった。彼は一党を引き具して四条通りを遊弋し、深更下宿に帰ることを習慣とした。一党の方はそのまま寝て了うのだが三木だけはそれから本を読むのである。おかげで一党の方は一向学業が成就しない。三木は主...

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